今回は、2016年12月から4年以上にわたり、通算38回の相談を実施している(有)介護サービスゆかり様の三瓶社長に「福島県よろず支援拠点」の活用とその効果についてお聞きしました。
※本記事は、うるしの実クラブ会報誌 Vol.1より抜粋・再編集したものです。
専門家派遣制度「福島県よろず支援拠点」
「よろず支援拠点」は各都道府県に設置されている国の公的支援機関です。「よろず支援拠点全国本部」のホームページでは同機関の特長を次のように紹介しています。
- ご安心を。よろず支援拠点は国が設置しています。
- 経営上のあらゆるご相談に何度でも無料で対応します。
- 中小企業・小規模事業者(個人事業主等)、NPO法人・一般社団法人・社会福祉法人等の中小企業・小規模事業者に類する方、創業予定の方のご相談、お待ちしています。
いわしんが顧問契約を結ぶ中小企業診断士等の外部専門家による常設の相談に加え、お取引先に対し専門性の高い分野の経営課題解決に向け、福島県よろず支援拠点をはじめとした外部支援機関と連携した専門家派遣の活用を積極的に提案しています。
Q.「福島県よろず支援拠点」の支援を受けるきっかけと、当時の課題は何ですか?
A.介護業界には、国の3年毎の介護報酬の改定によって、売上や収益が左右されるという特性があります。2015年の介護報酬改定により大幅な介護報酬単価の引下げが実行されたため、小規模な介護事業所の撤退が進みました。当社は2004年に創業。訪問介護、居宅介護事業を基盤に、デイサービス(2つ)、サービス付高齢者向け住宅(サ高住)を運営し事業拡大を進めて来ましたが、競合他社の増加による稼働率低下に加え、2015年の介護報酬減額改定が大きなダメージとなりました。当社は止む無く2つあったデイサービスを1つに統合しましたが、その後、約3年間、利益が出ず、資金繰りも厳しくなることが分かっていたので、そうなる前に“いわしん”に相談しました。そこで、2016年、「福島県よろず支援拠点」を紹介してもらい、事業に従事していた子ども3人と私の4人、そして“いわしん”の2人の担当者と共に、6人で郡山市の「福島県よろず支援拠点」事務所を訪れ、現状を説明。支援を受けることになりました。
Q.どのようなアドバイスを受け、どのように対処してきたのですか?
A.「よろず支援拠点」に相談した当時、当社は創業から14年が経過していました。正直に申し上げますが、事業規模が大きくなるにつれ、従業員に直接指導する機会が少なくなり、代表としての私の想いが従業員に届きにくくなっていました。「よろず支援拠点」の担当者からは、主に次の2点についてアドバイスをいただき、対策を講じてきました。
①意識改革が必要であり、介護サービスゆかりの一員として、社長自身が社員にどのように働いてもらいたいか?創業時の想いや企業理念をしっかりと従業員に浸透させるよう、従業員に対して提供できる利益も含め、定期的に伝えるようアドバイスがあり、代表自ら創業時の想いや企業理念を度々従業員に伝えることで就労意欲を高めました。
②業務改善を図るためには、他社がほとんどやっていない日曜のデイサービスの稼働と保険外収入の増加による収益率アップが必要とのアドバイスをいただきました。私自身は日曜日の稼働は従業員の大きな負担となり、辞めていく従業員が増えていくと思い、一部の利用者のニーズは承知していましたが、踏みきれずにいました。しかし、これまでの運営を根本から見直す必要性を感じていたので、従業員の意向を十分踏まえたうえで、極力少数の従業員を配置して実施した結果、デイサービスの利用を平日から日曜に変えた利用者もあって、平日の利用枠が増えたことで、デイサービス全体の売上が大幅に改善されました。また、保険外収入も、デイサービス利用者の増加により、お泊りデイサービスの需要も増えました。何より、心配していた日曜稼働で辞めた職員がいなかったことが良かったと思っています。
Q.「福島県よろず支援拠点」の支援についてどう思われますか?
A.これまで何人かの専門家のアドバイスを受けてきましたが、事業計画と比較した売上の実績管理が主だったものでした。今、お世話になっている「よろず支援拠点」の担当コーディネーターはご自身が県内屈指の総合病院でキャリアを積んできたことから、現状の医療・介護業界に精通されていて、私たちの立場に寄添い、現場の苦労もよく理解してくださいます。業界の今後の動向にも明るく、アドバイスいただいたことを実直にやって行けば大丈夫だという安心感があり、とても頼りにしています。
Q.御社の経営理念と今後のビジョンをお聞かせください
A.私は以前、病院に勤めていましたが、「誰もがいつまでも住み慣れた地域で生活できるよう少しでも役に立ちたい」との考えから、2004年に会社を設立しました。介護サービスゆかりの“ゆかり”には「利用者の方々、事務所で働く私たちヘルパーとの縁(ゆかり)がいつまでも続くように」との願いがあります。『利用者を幸せにすると共に、働く私たちも幸せになる会社を目指す』が私どもの経営理念であり、意欲のある従業員の資格取得の費用を会社で負担するなど、従業員の待遇改善に取組んでまいります。